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花影のカンタータ

月に照らされた花の影で、小さな小さな歌声を

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いきなり最終戦線!22 




 蒼竜とデューがついている穴から柱が出現した頃、すでに、暦とシュカのいる穴からは大量の魔物が出現していた。
「“光の円卓”」
「放出――」
 光の円盤が宙に現れると、円の周りから十の光が放たれた。その光に当たったモンスターは蒸発して、体の一部を失った魔物は穴に落ち、魔界へ帰っていった。
 暦は曲刀を十字に重ねると、かけ声と共にスライドさせ、斬撃を放った。黒い光をまとった斬撃はゆっくりと敵にむかってとび、突然巨大化し周囲の魔物を切り倒した。
 暦とシュカの目の前の穴からは、まるで黒い雨が降っているかのように、穴から魔物が進入していた。穴の大きさは蒼竜とデューがいる所とほとんど変わらない。しかし、常に魔界の雲が噴き出していて、魔物の数が一向に減らない。
 シュカは先ほどからずっと上級魔法を打ちっぱなしだった。魔力が切れる心配はない。天使は元々潜在能力が高いのだ。しかし、魔界の空気に満ちたこの場で、シュカの具合は最悪だった。光属性の魔法を放って周囲の空気を取り払っているからなんとかなっているが、上級魔法の連続に、集中力も途切れそうになっていた。
 シュカは、先ほど発動した光の円盤を自分の方に引き寄せ飛び乗った。そのまま上空へ向かい、穴を見下ろす。常にモンスターたちを吐き出し続ける穴は、まるで地上を飲み込もうとしているようで、シュカは生唾を飲み込んだ。
 恐い。こんな光景は、今まで一度も見たことがない。
「ど――――ん」
「うわあああああ!!!」
 突然、シュカの右横から黒くてうようよと浮遊する物体が飛んできた。言うまでもなく暦のオリジナル魔法だが、詠唱も何もないので、いつどこで発動しているのかシュカは全く分からないのだ。
 いつの間にか円盤に乗ったシュカのさらに上にいた暦は、円盤に着地した。あまりにも身軽に着地するので、そこに一段何かが置いてあるのかと思ってしまう。
「暦さん! 気をつけて下さい、僕当たりそうだったじゃないですか!」
「それはとろっとろのお前が悪いにょ」
 とろっとろ? 何だかおいしそうな……。あ、「動きがとろい」という意味か。
「ぼ、僕が体力ないのは暦さんも分かってるじゃないですか! それに、ここは魔界の気配が強くて、正直今、立っているのもやっと……」
 そのとき、とんでもないことが起こった。
 ジワッ
 暦の足元の円盤が、黒くにじんだ。まさに、にじんでいるのだ。
 シュカは光属性の魔法しか使えない、だから勿論、この光る円盤も光属性なのだ。光属性は、守護と回復において、全ての属性よりぬきんでて優れている。光属性の反対の闇属性に対しても、魔法にこめられた力が同じなら、打ち負けることは決して無い。
 しかし、今、シュカの目の前で、光が侵されている。別の力に、侵入されているのだ。確かにシュカが発動しているこの魔法は、防御のための魔法ではない。それでも、光の魔法が別の力に支配されるなんてことは、闇属性の魔法でも、ありえないのだ。
 何が起こっているのか、最初シュカは分からなかった。ありえないことが目の前で起こって、一瞬シュカは思考を止めてしまった。そしてぼんやりと、暦の足元から顔を上げていって、シュカは身を硬直させた。
 暦が、怒っている。
 じわじわと広がる黒しみのことなどどこかへふっとび、何かが及ぼす強制力で、シュカは暦に視界を固定させられていた。
「…………うっせーな」
 普段はどこを見ているか分からない目が、シュカをにらんでいた。眉間にしわを寄せて、目は完全にすわっている。暗く濁った瞳からは怒りが、全身からはいらついているのが、空気中にもにじみ出ているようだった。
 たった数秒間だった。暦はその数秒間が嘘のように、一瞬でいつもの暦に戻った。シュカは全身から汗を吹き出していたが、そのことには気付かず、未だに何が起きたのか理解しようとしていた。円盤に侵入していた黒い染みも、消えている。
 暦は特になにもなかったかのように小走りすると、円盤の縁に立って、黒い斬撃を放った。
「マミーはおばかでー頑固だからー」
 のんびりといつも通りの口調で話し始める暦を、シュカは呆然と眺めた。
「どーせ止めたってやめないんだにょ。だから早く、ぶったおしてっ」
 ザシュウ
「マミーのとこに行くんだにょ」
 暦は話している間にも次々と魔物を切り裂いていく。シュカもようやく先ほど起こったことと、暦の言葉の意味が分かってきた。
 そうか、だからマミーさんが門に行くとき、何も言わなかったんですね。
 むしろ暦が応援ともとれる言葉を投げかけていたことを、そしてそのとき自分が何を言っていたかを思い出した。
『僕たちもすぐ行きます!』
 シュカは自分の唇をぐっとかんだ。そうだ、体調が悪いからって、敵が多いからって何なんだ!シュカは拳を握って立ち上がった。
「やーいやーいシュカの弱虫ー。もやしー女男―このぐずー」
「人がやる気出してる時にそういうこと言わないで下さい!」
 あんまりな言いぐさに、シュカは「むむっ」と眉間にしわを寄せた。これでも怒っているのだ。
「倒しても倒してもきりがないから、暦さんもいらいらするんです! こんな穴……こんな穴……」
 シュカは両手をかかげて、ありったけの力をこめた。
「ふさいでやる!」
 両手に集まった光を穴に向かって放つと、二つの光はくるくると螺旋を描きながら穴の中央に浮かんだ。まるで真夜中に遠くで光る星のように、二つの光がまたたいた。
「“双子の星宮(ジェミニ・パレス)”」
 シュカが呪文を唱えると、二つの光が目も開けていられないほど輝き、その光が穴全体を覆った。魔物たちがあまりの光の強さに耐えきれず、急いで穴から離れ出した。多くのモンスターの視界がつぶされ、その視界が回復する頃には、餡には大きな双子座が描かれ輝いていた。
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Posted on 2013/09/30 Mon. 21:00 [edit]

category: いきなり最終戦線!

thread: 自作小説(ファンタジー)  -  janre: 小説・文学

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